2021/06/25 15:41

 福山雅治くんとは同級生である。

 いや、正確にいえば高校の時のクラスメイトが彼と同じ中学で、隣のクラスであった。

体育の時間は一緒だったという。

そういう訳で、私自身は一度も会ったことはないが、

同級生であることに変わりはないから「くん」と呼ばせてもらった。

もし本人を目の前にしたら絶対に言えないけれど。


 福山雅治の人気は驚異的だ。

昨年、長崎県美術館で開催された彼の写真展の時、それを思い知った。

オープニングの日、本人が来るということもあってものすごい数の女性が全国から集まった。

関係者は

「美術館が沈むかと思った」

とコメント(確かにあそこは埋め立て地だからあり得る話)。

また当日、友人が

「みんな美術館に行っちゃって、浜の町に人がいないんです!」

と報告しにきた。

私が福山人気で一番注目しているのは雑誌アンアンの「好きな男ランキング」である。

平成二十年の時点で十年連続二位だそうだ。

「十週」でも「十ヶ月」でもない、「十年」である。

この間、何百人もの若く、カッコイイ男たちがデビューしているはずだ。

にもかかわらず不動の二位、これは本当にスゴい。

これだけ長く人気を維持するにはただ

“才能があってカッコイイ”

だけでは説明がつかない、プラス・アルファの何かがあるはずだ。

私はそれを「カリスマ性」と考える。

「そなたに百年に一人のカリスマ性を与えよう」

と神様から授かって生まれてきたのではないか。

もし、そうであれば少しジェラシーである。

私もほぼ同じ時期に、長崎で生まれたのだ。

神様の大きな尺度から考えれば、

ほんの少しずれていたら私がそのカリスマ性を授かっていたかもしれない。

すなわち私が福山雅治だったかもしれないのである…。

 というのは昨年に私が使っていたネタで、かなりの確率で笑いを獲得した。

その日も取引先の女性を笑わせようとこのネタを披露し、最後の

「僕が福山雅治だったかもしれないのに」

と言って笑いを待っていると、彼女は真面目な顔で

「いやいや、高浪さんも負けてないですよ」

と慰めた。

私はあわてて

「これは冗談だから」

と弁解したが、どうもうまく伝わらない。

きっと彼女は私が福山雅治をライバル視していると思ったままだ。


 福山雅治は来年の大河ドラマ「龍馬伝」で主役に決定した。

幕末のカリスマを、現代のカリスマが演じる、こんなハマリ役はないだろう。

それではもしもハリウッドが「龍馬伝」をリメイクしたら主役はだれだろうか。

私はザ・ローリング・ストーンズのミック・ジャガーを推薦したい。

そう考えたのには理由がある。

六年前に観たストーンズのライブビデオの中で、

ミックが観客に向かって何か叫ぶのだが、字幕が

「いくぜよ」

と訳されていたのだ。

なぜ土佐弁なのか?

しかし不思議に違和感がなかった。

以来、私の中で龍馬とミックが一体化したままである。

 迷訳であるこのライブ映像、梅雨入りで外に出れない休日に鑑賞してみてはどうか。

Are you feeling good?」が

「どうなんでい?!」という訳もすこぶる良い。

2009年5月29日発行の『THE NAGASAKI No.637』に掲載されたテキストです



「ブリッジズ・トゥ・バビロン・ツアー」ザ・ローリング・ストーンズ Warner Home Video