2023/03/04 10:37

 「papa(パパ)」というのがジャガイモの本来の名前です。

原産地の南米、中央アンデスではそう呼ばれていました。

一六世紀後期、インカ帝国を征服したスペイン人が

ジャガイモをヨーロッパに持ち帰るわけですが、papaとうい名はちょっと都合が悪い。

彼らにとってpapaとはローマ法王のことだからです。

侵略した国の民が食している奇妙な植物がローマ法王と同じ呼び名でいいわけがない。

そこで彼らは新たに「patata(パタタ)」と名づけます。

その後イギリスに伝わった際には(まるで伝言ゲームのように)微妙に変化し

potato(ポテト)」になりました。

しかしフランスではまったく異なる名が与えられます。

「ポム・ド・テール」つまり「大地のリンゴ」。

オランダでも同じ意味の「アールド・アッペル」という呼び名で定着しました。


 十七世紀中期、オランダ人がこの大地のリンゴを

ジャガタラ(現在のジャカルタ)に設立した東インド会社を経由して長崎に持ち込みます。

さて、日本での命名ですが、長崎人はアールド・アッペルというネーミングは採用しませんでした。

ジャガタラからやって来たイモなので「ジャガタライモ」。

これが短縮されて、現在の「ジャガイモ」になったのです。

それにしてもジャカルタはあくまでも「中継地」であり、実際にもたらしたのはオランダなわけですから

「オランダイモ」というのが本筋ですよね。


 ジャガイモは「馬鈴薯(ばれいしょ)」ともいいます。
これは「中国ではそう呼ばれている」という「漢名」です。
ところが「馬鈴薯はジャガイモじゃないよ」との異論があり
江戸時代から現在にいたるまで三百年間ずっと論争が続いているって知っていましたか?
最初に疑問を呈した人物はあの大槻玄沢です。
では、馬鈴薯はジャガイモでなければ何なのでしょうか。
ある者は「むかご」といい、ある者は「ホドイモ」といいました。
昭和になると、ジャガイモは「甘藷」であると発表した博士まで現れたそうです。
2014年2発行の『月刊てりとりぃ第48号(3月号)』に掲載されたテキストの再録です