2023/06/03 10:48

「かっぱっぱルンパッパ♪」

あまりの嬉しさに思わず懐かしのCMソングを歌ってしまいました。

誕生日プレゼントに清水崑の「かっぱ絵」を家族に買ってもらったのです。

骨董店の店頭で出合って以来、日々「欲しい!」と訴え続け、ついに成就。

A2サイズ多彩色の直筆画を安価に購入できたのは地元ゆえの特権です。


 さて、崑さんの代名詞である「かっぱ絵」ですが、最初から持ちネタだったわけではありません。

デビューから数えて十九年目の昭和二十五年に火野葦平の小説『河童』の装幀を依頼されたのがきっかけでした。

かっぱなど描いたことがなかった崑さんは、その道の大家小川芋銭の『河童百図』を買い求め

研究した結果あの「崑かっぱ」を生み出したのです。

翌年、小学生向けの雑誌に動物モノをと頼まれた際、それじゃというので「かっぱ川太郎」を連載したところ

子どもではなく「大人がこぞって読む」という現象がおきます。

そこに目をつけた週刊朝日が大人向けの『かっぱ天国』の連載を崑さんに依頼しました。

これが大ブームに。

昭和三十年からは黄桜酒造のキャラクターにも起用されたのです

(崑さんが亡くなった四十九年以降は小島功にタッチ)。


 かっぱ以前の崑さんは「政治漫画」の人でした。
もっとも本人は政治に興味がなかったのですが、小林秀雄にごり押しされ『新夕刊』に連載したのが始まりです。
二十三年からは『朝日新聞』で連載するのですが、この時期首相だったのが吉田茂。
崑さんが描くユニークな吉田のカリカチュアは大評判で、首相本人も大変気に入っていたそうです。
ところが崑さん、岸信介が首相になった途端
「岸を素材にして絵を描くこと自体に興味を失った」
といって政治漫画から身を引きます。
なるほど、吉田茂のキャラと風貌は実に漫画向きですが、岸信介はいかにも
「政治家」でユーモアとペーソスに根ざした崑漫画では表現しづらいのかもしれません。
では孫の安倍さんは漫画素材としてはどうなのか? 
天国の崑さんに聞いてみたいものです。
2015年10月31日発行の『月刊てりとりぃ第68号(10月号)』に掲載されたテキストの再録です