2023/06/30 10:25

 96年頃だと思います。

濱田(高志)さんと電話で話していた時、思いがけずエヴァンゲリオンの話題になりました。

エヴァに熱中した共通の友人A氏が、インナーワールドにハマりこみ

「自分が見ているこの世界は本当に存在しているのだろうか」

と言い出して困惑したというのです。

その場では「心配ですね」と同意したものの、実は私自身が病的にハマっており

毎日繰り返し(それはもう狂ったように)観ていました。

97年の劇場版『Air/まごころを、君に』で何とか自分の気持に決着をつけて「エヴァ地獄」から抜け出しましたが

そのまま「病み」続けている人もいるに違いありません(A氏は無事です)。

メンタルに「グサリ」と刺さる痛々しい名作でした。


 7月2日から、長崎歴史文化博物館で『エヴァンゲリオン展』が開催されています。

行く前に、新劇場版『序』『破』『Q』を軽い気持ちで観たのですが、

19年ぶりのエヴァにまたぞろ心を侵されてしまいました(観るんじゃなかった!)。

Q』のサードインパクト(究極の核爆発?)のシーンを観ている時、ふと既視感に襲われました。

デジャブの糸をたぐり寄せてみると、辿り着いたのは「原爆」。

長崎市民は、幼い頃から平和教育を受けます。

小学生の娘は一年生の時、被爆者の話を聞いて感想文を書きました。

中学生になると「原爆資料館」を見学にいきます。

毎年七月になると、地元のテレビや新聞で一斉に「原爆」の特集がはじまり

焼けただれた被爆者の顔や背中を必ず目にします。

この原稿を書いている最中、商店街会長の三瀬清一朗さんが回覧板を持ってきましたが彼も被爆者です。

長崎はそれだけ「原爆」が身近で、ある意味強制的に「核」について思考を迫られ続ける場所なのです。

そういう環境で育ったゆえにエヴァの「核の物語」をフィクションとは思えないのかもしれません。

 54年公開の『ゴジラ』で、放射能を帯びたゴジラを恐れる女性が
「せっかく長崎の原爆から命拾いしてきた大切な体なんだもの」
と嘆くシーンがありました。
終戦からわずか9年後につくられた、これも「核の物語」。
さて最新作、庵野秀明の『シン ゴジラ』は、どのように核を描くのでしょうか。
今度はアニメーションでない分、さらにインパクトが強いかもしれません。
メンタルが持ち堪えられるか心配。
観ようかどうしようか本気で悩んでいます。
2016年9月3日発行の『月刊てりとりぃ第78号(9月号)』に掲載されたテキストの再録です